トラックを安全に長く使うためにはメンテナンスが欠かせません。トラックはもともと耐久性が高い車ですが、メンテナンスをすることでさらに寿命を延ばすことができます。高価なトラックを長く使うためにも、メンテナンスをしっかりと行いましょう。
今回は、トラックを長持ちさせるために欠かせないメンテナンス方法についてご紹介いたします。
トラックは車検・定期点検・日常点検といった3つのメンテナンスを行う必要があります。いずれの点検も「道路運送車両法」によって義務付けられており、トラックを運転するドライバーにとって大切な業務の一環です。
自動車に必要な点検といえば、多くの人が車検を思い浮かべるでしょう。
一般の乗用車は初回で2年、以降は3年おきに行いますが、トラックの場合は原則1年ごと(車両の重量が8トン以下の場合、初回は2年)と決められています。点検項目や合格基準も明確に定められており、ディーラーや整備工場などで点検するのが一般的です。
定期点検は、トラックなどの車両に対して車検後3か月ごとに点検・記録するよう義務付けられているものを指し、車検と並んで大変重要な点検です。車検と同様、整備工場で行うのが基本ですが、2級以上の国家整備士資格を有している人材が社内にいる場合は、自社で実施できます。
日常点検とは、始業前点検や中間点検、就業後点検などの日常的に行う点検全般を指します。なかでも運行を始める前に行う始業前点検は、点検時の内容を日報に記録するように義務付けられており、物品を安全に運ぶうえで大切なメンテナンスの一つです。中間点検と終業後点検は任意とされているため、省略する会社も多いですが、走行中にトラブルが発生するリスクを考えると、できる限り行うことが望ましいでしょう。
点検を適切に行わずにトラックを運転した場合、故障や事故の危険性が高まります。走行に問題がなくても、ウィンカーやブレーキランプの電球が切れていれば、後続車や歩行者との接触事故を引き起こしかねません。場合によっては整備不良や車検切れを理由に罰金が科せられることもあるでしょう。
またトラックの整備不良による事故は、会社の存続にもかかわります。定期的な点検を受けるのはもちろん、ドライバー自らが安全管理への意識を高めて、積極的に行っていくことが大切です。
車検や定期点検は外部の整備士が行いますが、日常点検はドライバーや事業者が責任をもって行わなければなりません。特に次のような場所は、トラックの性能や走行にかかわる大切な部分なので、しっかりと点検しましょう。
トラックを含めすべての自動車には、エンジンオイルやミッションオイル、デフオイル、ブレーキオイルなどが装填されています。なかでもエンジンオイルは、トラックの潤滑・冷却・防錆・洗浄の機能を担う大切な存在です。エンジンの稼働にかかわるため消耗が激しく、量が少なくなったり劣化したりすると、さまざまなトラブルの引き金になる可能性があります。点検の際はオイルの残量が十分に足りているか確認し、古くなっている場合はオイル交換を行なってください。
また、その他のオイルにも潤滑油の役割があり、どれが欠けても安全な走行は続けられません。特にブレーキオイルはブレーキの効きにかかわるため、必ず点検しておきましょう。
もし追加や交換をしてもオイルの減りが早いときは、内部漏れが起きている可能性があります。ディーラーや整備工場などで修理をする必要があるため、早めに相談してください。
エンジンの稼働時に発せられた熱は冷却ファンや冷却水などによって、運転に支障がないレベルまで下げられます。そのため、これらの冷却系統に不備があるとエンジンが異常加熱され、オーバーヒートを起こしてしまう恐れがあります。
オーバーヒートの主な原因は、冷却ファンの故障や冷却水の残量不足です。冷却水はエンジンルームで確認でき、エンジンをかけることで冷却ファンが正常に回転しているかも観察できます。
バッテリーは、エンジンの始動、ヘッドライトやパワーウィンドウの稼働に必要な電力を供給するための装置です。バッテリーには電気を貯めるための液体が充填されており、液量が不足しているとエンジンがかからないといったトラブルにつながります。さらにバッテリー本体の劣化が進み、状態によっては爆発する恐れもあるでしょう。メンテナンスの際は、バッテリー液が上限値と下限値の間にあるかを確認し、少なくなってきているのであれば補充してください。
またバッテリーの寿命は2〜3年と言われているため、使用期限が近づいたら新しいものに替えなければなりません。交換して間もないにもかかわらず、すぐにバッテリーの寿命が来てしまう場合は、充電機能自体に問題があるかもしれないため、整備工場でチェックを受けましょう。
最近はメンテナンスフリーのものも増えていますが、安心安全な走行をするためにはこまめな点検が大切です。
走行距離が長いトラックのタイヤは摩耗が激しいため、日々の点検が肝心です。
傷・ヒビ・スリップサインの有無や溝の深さを確認することも大切ですが、そもそもの重量や荷重が大きいトラックは偏摩耗に注意する必要があります。偏摩耗とはタイヤの一部が偏って擦り減っており、タイヤのバランスが崩れた状態のことです。走行時の安定性に影響し、偏摩耗したタイヤのまま走行すると、回転がブレてトラックが制御できなくなり、しまいには重大な事故へとつながる可能性があります。また、タイヤの不具合が振動となって車体に伝わり、結果的にトラックの寿命を早めてしまうことも珍しくありません。
偏摩耗の主な原因は、空気圧の過不足です。多くの場合、車両に空気圧の基準値を示したステッカーが貼られているので、必ずチェックしておきましょう。目安として、走行距離5,000kmにつき1回タイヤのローテーションを行うと、偏摩耗をある程度防げます。
エンジンルームには先ほど解説したオイル系統、冷却装置、バッテリーのほか、ファンベルトなどもあり、車両を動かす際の原動力となる場所です。毎日のメンテナンスを欠かさず行い、異常が見られたらすぐに対処できるようにしておきましょう。
きちんとメンテナンスを行っても、走行中に思わぬトラブルに見舞われることもあります。定期的な交換が必要な消耗品は切らさないようにし、車内にあるメーターパネルの警告灯をこまめに確認する習慣を付けておきましょう。
オイル系統やタイヤなどの消耗品は、定期的に確認し、必要に応じて補充・交換を行いましょう。ただし、メンテナンスは故障や事故を防いだり不具合を直したりするだけの処置であり、車体やエンジンには必ず寿命があることを念頭に置いてください。
トラックのメーターパネルには、約30種類の表示灯と警告灯があり、エンジンルームなどを見なくてもトラックの状態がわかるようになっています。特に警告灯は、トラックの稼働や走行にかかわる装置の異常を知らせるものであり、点灯時には迅速な対応が必要です。
さらに警告灯には「オレンジ(黄色)」と「赤」の2種類があり、それぞれで意味する状態が異なります。オレンジは「走行に問題はなく注意が必要な状態」であり、緊急事態ではないものの安全性を考慮して早めの対処が求められます。一方、赤は「ただちに走行をやめて適切な対処が必要な状態」を指すため、非常に危険です。
緊急性の高さが異なるとはいえ、どちらも装置に異常が起きていることには変わりありません。オレンジの警告灯が表示された時点でディーラーや整備工場に持ち込むなど、しかるべき対処をとりましょう。
トラックの使用限度には、運転時の操作も大きく影響します。日頃から丁寧かつ安全な運転を心がけることが大切です。
始動直後のエンジンやトランスミッションなどの部品は冷えており、そのまま走行を始めると負荷が大きいため、十分な暖機運転を行いましょう。
暖機といえばアイドリングによる方法が一般的ですが、停車状態で行うため、排出ガスの充満に気を付けなければならないうえにトランスミッションの暖機ができません。運転を始めてすぐも、緩やかなスピードと丁寧なハンドル操作が求められます。
しかし、低速走行を行えば、アイドリングとほとんど同じ回転数で暖機が可能です。またエンジンとトランスミッションを同時に暖機できるのもメリットと言えます。ただし、他の車両の通行を妨げてしまうこともあるため、市街地で行うのは避けましょう。
いずれの方法も必ず水温計が動き、原動機が十分に温まってから通常の走行を始めてください。
急発進や急加速、急ブレーキといった「急」の付く粗い運転は、エンジンに大きな負担をかけてしまいます。場合によっては、エンジンの劣化を早めたりタイヤの寿命を縮めたりする可能性もあるため、丁寧な運転を心がけるようにしましょう。
トラックを運転する際、多くの場面で半クラッチが使用されますが、過度な使用はクラッチ板が劣化・破損する原因の一つになります。またクラッチに不具合が起きるとエンジンやトランスミッションのトラブルへとつながる恐れもあるため、注意が必要です。日頃から半クラッチの多用を避け、スムーズな操作技術を身につけておきましょう。
トラックをできるだけ長持ちさせるには、法律で定められた点検のみならず、ドライバー自身が意識して日々のメンテナンスを行うことが大切です。すべての項目をチェックしたとしても10分程度で終わる作業なので、安心安全な走行をするためにも積極的に行っていきましょう。